近年、少子高齢化に伴って労働不足が不足し、各産業において人材の確保が難しくなっています。
そこで注目されているのが「特定技能」制度です。
特定技能は人材確保を目的とした新たな在留資格です。
本記事では、飲食料品製造業が特定技能制度で外国人を受け入れる際に、必要な要件をご紹介してきます。
目次
1.特定技能とは
1-1.就業可能期間
1-2.受入可能業種
1-3.従事可能な業務
1-4.雇用可能人数
2.特定技能ビザを取得するためには
2-1.技能実習を良好に修了すること
2-2.試験に合格すること
3.飲食料品製造業が人気の理由
4.特定技能生を受け入れるためには
4-1.雇用契約が適切であること
4-2.主な産業が飲食料品製造業に分類されること
4-3.受入れ企業自体が適切であること
4-4.特定技能生を支援する体制があること
4-5.協議会の構成員になること
5. まとめ
特定技能とは
特定技能とは、2019年に新設された在留資格です。
人手不足を解消することを目的とし、一定以上の知識や経験・技能を有する外国人を受け入れる制度です。
特定技能外国人の受入可能な業種は12業種ございます。
飲食料品製造業でも特定技能外国人の受入れが可能です。
2022年6月時点での飲食料品製造業における特定技能外国人は、29,617人となっています。
この数は12業種のうち一番多く、外国人にとって人気の業種となっています。
今後も飲食料品製造業において、特定技能外国人の受入が拡大されることが期待されております。
就業可能期間
飲食料品製造業では、最大5年間の就業が可能です。
(特定技能1号の在留期間は最大5年)
一時帰国した際の期間は、在留期間に含まれないため、
繁忙期のみ就業して頂くという働き方も可能です。
受入れ可能な業種
飲食料品製造業でも、特定技能外国人の受入れが可能な業種は
さらに細かく分類されています。
受入れ可能業種
- 畜産食料品製造業
- 水産食料品製造業
- 野菜缶詰/果実缶詰/農産保存食料品製造業
- 調味料製造業
- 糖類製造業
- 精穀/製粉業
- その他の食料品製造業
- 清涼飲料製造業
- 茶・コーヒー製造業
- 製氷業
- 菓子・パン小売業
- 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業
※酒類の製造は、受入ができません。
従事可能な業務
特定技能外国人が従事可能な業務は、製造/加工・安全衛生です。
製造加工とは、原料の処理、加熱、殺菌、成形、乾燥等の一連の生産行為等を指し、
安全衛生とは、使用する機械に係る安全確認、作業者の衛生管理等、
業務上の安全衛生及び食品衛生の確保に係る業務を指します。
加えて、同業務に従事する日本人が行う関連業務であれば、付随的に従事することも可能です。
例)原料の調達、受入、製品の納品、清掃、事務所の管理作業など
雇用可能人数
飲食料品製造業では、採用人数に制限はございません。
企業側が必要な人数の採用が可能です。
特定技能ビザを取得するためには
外国人が飲食料品製造業において、特定技能ビザを取得するためには以下2つの方法がございます。
①技能実習を良好に修了すること
1つ目の方法は、飲食料品製造業の企業で技能実習を良好に修了(3年以上)することです。
技能実習修了者は、特定技能ビザへの移行が可能です。
②試験に合格すること
2つ目の方法は、「飲食料品製造業特定技能測定試験」および、
「国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上)または日本語能力試験(N4以上)」の試験に合格することです。
飲食料品製造業特定技能測定試験は、飲食料品製造業に関する知識や技能を測る試験です。
国内外で試験が実施されています。
「国際交流基金日本語基礎テスト」および「日本語能力試験」は日本語レベルを測る試験です。
日本語能力試験はN4以上、国際交流基金日本語基礎テストはA2以上が必要です。
日本語能力試験は国内の場合、1年に2回(8月・12月実施)、
国際交流基金日本語基礎テストは、ほぼ毎日実施されています。
*技能実習修了者は日本試験免除
▼日本語試験公式ホームページはこちら
日本語能力試験ホームページ
国際交流基金日本語基礎ホームページ
▼特定技能取得資格に関するコラムはこちら
「特定技能1号」の在留資格取得に必要な本人要件とは?
特定技能測定試験と日本語試験をご紹介!
飲食料品製造業が人気の理由
外国人にとって、飲食料品製造業が人気の理由は、制度の仕組みにあります。
通常、技能実習を修了した者が、同職種で特定技能へ移行する場合には、
飲食料品製造業特定技能測定試験は不要です。
異なる職種や業種へ転職したい場合のみ特定技能測定試験の資格が必要です。
一方、飲食料品製造業では、飲食料品製造業内の業種内であれば、特定技能測定試験が免除され、そのまま移行・転職することが可能です。
そのため、他の業種に比べ、転職がしやすい飲食料品製造業は外国人にとっても人気な業種となっています。
飲食料品製造業での受入企業要件
飲食料品製造業で、特定技能外国人を受け入れる場合の企業要件は以下の通りです。
雇用契約が適切であること
特定技能外国人を受け入れるために必要な企業要件の1つ目は、「外国人と結ぶ雇用契約が適切であること」です。
特定技能外国人と企業が結ぶ雇用契約を「特定技能雇用契約」といいます。
特定技能雇用契約には定めなければいけない事項がいくつかあります。
・労働時間(日本人同等の所定労働時間)
・報酬額(日本人同等以上)
・有給休暇(一時帰国を希望した場合、有給を取得させないといけない)など
また、この特定技能雇用契約は受入企業と外国人が直接結ぶ直接雇用でないといけません。
主な産業が飲食料品製造業に分類されること
特定技能外国人を受け入れるために必要な企業要件の2つ目は、「主な産業が飲食料品製造業に分類されること」です。
受入企業は上記で記載した特定産業分野の飲食料品製造業に分類されている必要があります。
また、産業分類の決定方法は、以下のように定められています。
・1事業所内で単一の分類項目に該当する経済活動が行われている場合は、その経済活動によって決定する
・複数の分類項目に該当する経済活動が行われている場合は、主要な経済活動によって決定する
複数の業種を行っている企業の場合、特定技能外国人の受入をしたい業種で、その業務が売上等が2分1以上超えていれば受入が可能になります。
受入れ企業が適切であること
特定技能外国人を受け入れるために必要な企業要件の3つ目は、「受入企業が適切であること」です。
受入企業は、法令や省令などに遵守していることが必須です。
過去に受入機関で雇用していた外国人が失踪していたり、労働法に違反する雇用形態が摘発されていたりすると、受入機関として適切ではないと判断されてしまう可能性もございます。
以下は受け入れ機関に求められる基準の例です。
・労働、社会保険および租税い関する法律を遵守していること
・特定技能雇用契約を結んだ日から1年以内に、同じ仕事に従事していた労働者を解雇していないこと
・特定技能雇用契約を結んだ日から1年以内に、外国人の行方不明者を発生させていないこと
・過去5年以内に、技能実習法に基づき実習認定を取り消されていないこと
・過去5年以内に、出入国管理関係法令や労働関係法令に違反する脅迫・暴行・脅し、外国人のパスポートを取り上げる、給与の不払い等を行っていないこと
外国人を支援する体制があること
特定技能外国人を受け入れるために必要な企業要件の4つ目は、「外国人を支援する体制があること」です。
受入企業は特定技能外国人が日本での就労を円滑に進めていくための体制を整える必要があります。
特定技能1号の外国人に対して、受入企業は支援計画書を作成・実施する義務を負います。
・事前ガイダンス
・出入国する際の送迎
・住居確保・生活に必要な契約支援
・生活オリエンテーション
・公的手続き等への同行
・日本語学習の機会の提供
・相談・苦情への対応
・日本人との交流促進
・転職支援
・定期的な面談・行政機関への通報
ただし、書類作成等で専門的な知識が必要になる場合が多く、受入企業側だけで支援することが難しいため、登録支援機関に委託し、登録支援機関が実施していくことが一般的です。
「協議会」の構成員になること
特定技能外国人を受け入れるために必要な企業要件の5つ目は、「食品産業特定技能協会の構成員になること」です。
特定技能外国人を受け入れる全ての受け入れ機関・企業は協議会の構成員になることが必要です。
協議会は、業種ごとに協議会が設置されており、飲食料品製造業の協議会は「食品産業特定技能協議会」といいます。
受入企業は協議会の構成員となり、協議会の活動に協力しないといけません。
以下は協議会の活動内容の例です。
・特定技能外国人の受け入れに係る制度の趣旨や優良事例の周知
・特定技能所属機関(受入機関)等に対する法令順守の啓発
・就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
・地域別の人手不足の状況把握・分析
まとめ
人材不足が深刻化するなか、飲食料品製造業では今後も「特定技能」の外国人を受け入れていくことが見込まれます。
しかしながら、受入企業と特定技能外国人の間で発生するトラブルが問題になっていることも事実です。
特定技能外国人に気持ちよく働いてもらうため、受入企業は、受入体制や支援内容をしっかり理解し、受入準備を進めていくことが必要です。
参照:出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
農林水産省「飲食料品製造業分野における特定技能外国人受入れの制度について」